「アジェンダ」の意味するもの (2010年09月号)

 

議事録作りの懐かしい思い出

 アジェンダ、参議院選挙で善戦したみんなの党の代表・渡辺喜美さんが口を開くと出てくるこの言葉、半世紀以上前の若かりし頃の私の思い出の中にもある。

 当時、文化、学術、教育の分野での国際交流の場となる台湾初の施設、国際学舎で働いていた私に館長秘書に、との打診があり、テストを受けた。結果は不合格、しかし、館長はアメリカから2年契約で来た大学教授、人を育てることに熱心で、勉強する気があるのなら、ということで採用となった。 秘書の仕事の一つに会議の議題、アジェンダ、の作成があった。月1回の理事会、アメリカ公使、中国銀行頭取、蒋介石の次男蒋緯国(しょういこく)といったそうそうたるメンバーが館内の台北一のフランス料理店で昼食をとりながらの2時間会議、そのアジェンダを作成し事前に配布する。ここまではいいのだが、問題は会議の議事録、これも秘書の仕事なのだ。

 英語の会議にはついていけない、食いしん坊で美味しい料理は食べたい、そんな私に議事録は難題。それを知る館長曰く、日時と数字だけは正確にメモしてくれ、あとは何とかする、と。

 会議で飛び交う英語を、食事をしながらメモし、終了後、記憶が新しいうちに館長が議事録を作成、できたページから謄写版用ロウ原紙に私がタイプし直す。最後に記録者として私の署名を入れ、印刷、配布する。次の理事会では、みなさん口々に「アリス(私の英語名)、君の英語は素晴らしい」と。館長の英語であり当然だが、返事にほとほと困った。

「国策」に変身した「アジェンダ」

 この参議院選挙で久しぶりに聞いた「アジェンダ」、マニフェストという言葉が賞味期限切れとなったとたんに、また何やら新しい横文字。訳もわからずそれに惑わされる有権者も有権者だ。

 駆出しの秘書が整えていた「アジェンダ」が一躍天下の国策に変身。現代の世相はポピュリズムが幅をきかせる、と考えると、それを打ち出した渡辺さんの勝ち、という気もしないではない。

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