「バラマキ」が止まらない (2010年02月号)

 

 鳩山由紀夫首相は、かねてから非現実的な言動で宇宙人と称されているが、実際に政府のトップに立った現在、その一挙一動は日本国の安泰に直結する故、決して見過ごされていいものではない。かつてはユーモラスなニューアンスを込めての「宇宙人」、現実の社会に於いては「鈍感」としか言いようがない。その負の影響は計り知れないが、マスコミは意識的なのか無意識なのか、鈍感に見過ごしている。与党時代の自民党に対する針小棒大なバッシングと比較すると、そのバランスの悪さに目が眩む。

 小沢一郎幹事長が大デリゲーションを引き連れて中国詣でをした直後、台湾の民進党蔡英文主席が来日した。直前に挙行された台湾の地方選挙について、日本の政界と情報交換を兼ねての交流が目的であった。12月13日到着後、その足で在日台湾人の集りに参加し、選挙結果を報告した。民進党の総得票45%、国民党47%とかなり接近したが、負けは負けである。それでも得票率2、3%増ということで、先行きに展開が見え、会場には予想より多くの参加者が詰めていた。今更ながらこの世の現実的な反応を見る思いであった。

 ここで特筆したいのは15日、有楽町の外人記者クラブでの蔡英文主席の記者会見である。その見事な英語と相まって、内容も是非多くの日本人に届けたいが、残念ながら報道された気配はない。

 蔡主席は台湾生まれの台湾育ち。台湾大学で法律を専攻し、アメリカ・コーネル大学で修士、イギリス・ロンドン大学で博士と、英・米に留学した学歴ではあるが、英語の発音といい、流暢さといい、ほとんど完璧な語学力、その上学者出身とは思えない実行力も兼ね備えている。

 同じくアメリカ留学の鳩山首相、国連で原稿棒読み。発音はお世辞にも良いとは言えず、そんなスピーチを英語ペラペラとおだてるメディアだが、ある台湾の留学生曰く、「アメリカ留学時代の写真を時々見るが、廻りはいつも日本人だけ」。察するに現地でも鳩山家の庇護の下、幸さんとのデートに忙しかったのだろう。いづれにせよ、留学したからといってその国の言語に精通するかどうかは個々人の資質・努力にかかっているのである。

 会見で蔡主席は台湾情勢を主に話し、再三日米同盟は「日本、台湾にとってだけでなくこの地域の安全にとって絶対に不可欠である」と強調した。質疑応答も自由自在に対応し、「中国の習近平さんが30日ルールを破って、天皇陛下と会見したことをどう思いますか」と聞かれ、次のように答えた。

 「かなりアグレッシブですね。日本の慣習、伝統、外交上の儀礼、プロトコル、を無視したふるまいです。これは最初でもなく、今回だけでもなく、更に言えば、日本に対してだけではなく、どの国に対しても起こり得ることです」

 これだけ見事な応対ができる政治家は、日本にどれほどいるのだろうか。蔡英文、53歳、女性。中国のブラックホールに引きずり寄せられつつある台湾の最前線に立つ彼女に、心からエールを送りたい。

 それにしても、中国の覇権主義に対抗する橋頭堡であった台湾は陥落寸前。この地域の国々が頼りにするのは日本であるが、肝心の日本政府がこの体たらく。毎日、新聞を賑わすのは負の報道。首相のリーダーシップの欠如。小沢幹事長の傲岸不遜。閣僚間のイザコザ。誰も幹事長にNOが言えないが決して一枚岩ではない。なんとも不思議な執行部である。その上金銭スキャンダルで数々の疑惑を持たれているトップ二人。秘書が相次いで起訴された。それでも鳩山首相は相変わらず涼しげな顔、不祥事がカスリもしないのである。

 12月7日から18日まで、コペンハーゲンで開催されたCOP15は、「中国が途上国を率いグローバルプレーヤーとしての力を誇示する場と化した。(中略)G2(米中)の攻守は完全に逆転したことを世界中に印象づけた」(12月19日産経新聞)

 国際会議でエゴ剥き出しの国を相手に「友愛」を説き、いきなり25%削減、「鳩山イニシアチブ」と称する1兆7500億円の援助。ただでさえ財政難に喘ぐ日本の不況に対し、全く鈍感の限りである。「恵まれた家庭で育った」御身としては当然の成り行きであろうが、こんな総理大臣に任せては、国が破産する。ジャパン・アズ・ナンバーワンは夢のまた夢としても、せめて現状の生活レベルを維持するのが政府の責務である。

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