政界列島に本当の快晴を願う (2009年12月号)

 

 衆院選の余勢を駆って、10月25日の参院補選も民主が2勝した。開票0%でNHKが民主党候補者当確と速報を流したが、翌日の朝刊(産経)も一面にこのニュース。「自民党の不満の秋」はいつまで続くのだろうか。

 26日の朝、テレビを賑わしていたのは、のりピーこと酒井法子被告の初公判。20席の傍聴券に6,615人が駆けつけた。前夜から並んだ者もいた。昼、夕、夜も続けて一日中、これでもかこれでもかと各局右へ倣えと、うんざりする。

 午後、鳩山首相初の所信表明演説をリアル・タイムで観た。52分間に及ぶ長広舌は総花的で、心に響く内容ではなく、もっぱら政権交代を成し遂げたこと、「友愛」の政治理念の自画自賛を縷々述べ続けた。NHKのカメラが先ず森元首相が目を瞑っている姿をクローズ・アップし、その後再三菅直人副総理兼国家戦略担当相の居眠りシーンを捉えた。やっと退屈な演説が終わると民主党席は一人立ち二人立ち、遂には全員スタンドオベーションとなった。先刻まで眠気と戦っていた菅氏まで立ち上がって、ニコヤカに首相を迎え、握手していた。演説そのものは得ることなくても、こういう中継はそれなりに面白い。小沢一郎幹事長の隣に座っていた羽田孜元首相の虚ろな表情。国会議員として任務を全う出来るのだろうか。

 のりピーの初公判と首相所信表明のテレビ視聴率はおそらく較べることもできないほど、前者が高いだろう。日本社会が太平楽で、ある意味では余裕があるのは決して悪いことではない。敗戦から64年の年月、灰燼と化した国土の中、日本は見事に今日の繁栄を築き上げた。ここ数年、格差、貧困と騒がれているが、生活レベルはかなり高い。仕事で地方によく出かけるが、その都度面白い出会いがある。

 伊豆・今井浜東急リゾート、朝食で出会ったレストランのウエイトレスは、背が高く、真っ黒に日焼けして、きりっとした顔つきのいかにもサーフィンを楽しんでいるといった素敵なお嬢さん。訊いてみるとやはりサーフィンが大好きで、今井浜でサーフィンを楽しむためにホテルで契約社員として働いているとのこと。日本経済が悪くなっているとはいえ、そういう生き方ができる状況を見るとほっとする。自分の好きな趣味を追いかけ、働きながら楽しんでいる、魅力的な女性。そろそろ子供が欲しい、と言うので、あなたに似たかわいい子供をぜひ、と思わずエールを送った。 その前にパートナーも、と。

 次のホテルはホテルクラビーサッポロ、札幌のサッポロビール工場跡地に建てられた複合商業施設の一角にある。中くらいの規模の、気配りの素晴らしいホテル、フロントの男性がタクシーを迎え、「お待ちしておりました」と一言。チェックインし、部屋に案内していただき、ふともらした「じゃあイタリアンにでも行こうかなぁ」という言葉がすぐにレストランに伝わり、行くと「明日のセミナーの講師の方ですね。お待ちしておりました」と。このレストランでは素敵な青年がウエイターとして働いていて、「あなた札幌?」と訊くと「違います」、「どこから来たの?」「千葉です」、「なんで札幌に来たの?」で返ってきた答えが、日本ハムのフアンなので。応援するために札幌に住み、働く。先のサーフィンのお嬢さんともどもこういうライフスタイルが保てる状況はいいことだ。お嬢さんの方はいずれ結婚して落ち着くといった感じだが、青年の場合はもともとホテルマン志望で、好きな野球チームの応援をしながら、自分のキャリアも大切にして着々と積み上げている様子。気遣いのしっかりできる、サービス精神のある青年で、きっといいホテルマンになるだろう。

 呉のクレイトンベイホテルでは中国人青年がウエイターをしていた。なんだかもう一つ伝わらないと思っていたら、外国人だった。働き口がないと喧伝されているが、実は人手不足でもある。言葉が十分でなくても、外国人でも採用してもらえるのだから。日本はまだまだ余裕のある社会ではなかろうか。

 27日朝、台風一過の快晴。窓から見える富士の美しさに思わず歓声を上げた。八合目位までの白銀が真っ青の空に輝いていた。ふと目を転じると、御苑の木々も少しずつ紅葉が始まっている。台風20号は時速95キロメートルの速さで過ぎ去っていった。民主党台風後の日本列島にも快晴が戻ることを、とひたすら願う。

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