尖閣諸島問題について (2010年10月04日)

 

ー中国に何を言っても無駄である。これは日本人の問題ですー

 今週金曜日8日に開設予定の美齢塾、そこで配信するメールマガジン、「金美齢の『この国のかたち』を一緒に考えたい」からの抜粋を掲載いたします。メールマガジン配信は原則週1回、更に、座談会なども企画したいと考えています。ぜひご参加ください。なお、今回の内容は週刊ポストからの取材に対応した全文となっています。本日、10月4日発売の週刊ポスト掲載記事と合わせてお読みください。当初の取材タイトルは「中国にもの申す」でした。以下全文です。

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 私は、中国にもの申すのではなく、日本政府、日本国民にもの申したいと思います。まず、以前から私が指摘している通り、民主党が素人政権であることが分かりました。勿論、それが証明されても全然嬉しくはありません。今回の事件を通じて、中国人は、何でもありで、理屈が通らない、自分のやりたい事をやっている相手だと分かったはずです。中国人に一歩譲ったら、二歩攻め込まれるということを私は言い続けてきました。日本人同士だったら阿吽の呼吸で、今日私が譲ったら、明日はあなたが譲ってくれるだろうと思うでしょう。しかし、中国にはそれは通用しないのです。弱いと思ったら嵩に懸かってくるのが中国人です。それが全然分かっていないのが日本人です。

 日本と中国は隣の国だから付き合わない訳にはいきません。だからこそ、相手を良く知る必要があります。日本人はこうだから、中国人もこうだろうと幻想を抱きながら付き合う事は、最初から間違いなのです。中国人のメンタリティーを理解しないと、交渉ごとは成り立ちません。日本人はいつも自分のメンタリティーで相手を考えます。そもそも日本国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と書かれていますが、そんな国はありません。特に中国は違います。どの国も国益優先ですが、中国は国益が常に優先です。そして手段は、何でもありの国です。常に手持ちのカードをどう有効に使うかという事ばかり考えている国です。このことを承知の上で、日本は物事を計らなければならないのです。

 今回のように漁船の船長を逮捕するのであれば、最後まで貫き通す覚悟と用意がなければ、逮捕してはいけないのです。コラムニストの勝谷雅彦氏が、自民党は逮捕もできなかったが、民主党はやったのだと、テレビで発言していましたが、それが間違いなのです。その貫き通す覚悟と準備ができていなければ逮捕はできないのです。つまり見逃し、追い出すしかなかったのです。もし逮捕してしまったら後の処理がこのようになるのは見えていました。途中で腰砕けになるぐらいなら、最初からやるなと言いたい。だから、週刊誌で特集として、中国にもの申すという態度は間違いなんです。中国に何を言おうと中国は聞きません。自分の考えで物事を進めているだけですから。論理も、ロジックも、世界的な常識も、何でもないのです。何を言っても意味がないのです。

 今、日本政府に期待しても、ある意味アマチュア政府だから仕様がない。むしろ、日本人に言わなければいけないと思っています。今回の事件で、常日頃私が伝えてきたことが、正しいということが認識されたと思います。何を考え、どうすればいいか、そのことを日本人が考えなければいけない。中国人のメンタリティーと日本人のメンタリティーは全く違います。それを認識して付き合い方を考えないといけません。台湾はいずれ、あのブラックホールに飲み込まれます。その次は日本なんだと常々、私は言ってます。その覚悟を日本人は持たなくてはいけないと強く言っているのです。

 今回も、日本の領土を守れるかどうかの瀬戸際ですが、日本人がその覚悟を示さない事には、今後ますます中国は要求してきます。既に尖閣諸島には中国の監視船が来てます。釈放された船長も、また尖閣諸島に魚を捕りにいきたいと言ってるじゃありませんか。私のスタッフも、あのVサインは何なんだと言っていましたが、彼らにとっては、勝利の宣言なのです。あれが中国人のメンタリティーです。今フジタの社員が拘束されていますが、すべてをカードにしてしまう国なのです。そして、それぐらいしないと、政権が潰れて、胡錦濤国家主席、温家宝首相も引きづり降ろされてしまう国です。自分たちの権力を保つためには、強硬手段にでるしかないのです。そのような国なのです。空念仏のように日中友好と言っていてもダメで、日本はいざという時に、カードにされないくらいの危機管理はしておかなければいけません。漁船がぶつかってきている映像もなぜ公開しないのか、何に遠慮しているのかと言いたい。

 日本人に目覚めてほしい。私が言い続けてきたこの危機感を覚えている方は、この現実を目の前にして、目覚めてほしいと思ってます。

 今回逮捕したのであれば、最後まで貫き通さなければいけない。日本人の覚悟をみせないといけない。それなのに、妥協して船長を返しても、中国は全然折れないどころか、嵩に懸かっているじゃありませんか。本当は関わりにならないのが一番いいのです。しかし、そういうわけにはいかないから、関わる場合には、覚悟せよ、そして、相手のメンタリティーを充分に認識した上で、タフなネゴシエーターを全面に打ち立てなければならないのです。これしかないのです。しかし今そういう人はいない。民主党はあらゆる意味でアマチュア政権です。鳩山由紀夫元総理大臣も軽い発言をしていましたし、菅直人総理大臣も軽々しい発言をしています。それでは、国際社会では、通用しません。相手は老練な中国です。すべてのカードを自国のために有効にだけに使おうと思っています。

 中国には、次のような四字成句があります。魯迅が残した言葉で「打落水狗」です。つまり「水に落ちた犬は叩け」という意味です。日本人であれば、水に落ちた犬に対して、可哀想だから助けてあげようというのが日本人のメンタリティーですが、中国人は、そうではないのです。水に落ちた犬は立ち上がれないように打ちのめせと、そう「打落水狗」は言っています。ですから今回でも、一歩譲ったら、お前の方が間違っていたから、更に謝罪と弁償をしろと言うのです。そして一番日本人が弱いのが、人の命。中国は、日本人4人を拘束しました。私のスタッフも、温家宝首相の国連での演説のタイミング、船長のVサイン、花火にブラスバンド演奏での帰国歓迎の様子、日本人4人の拘束などと、シナリオライターがいるのかのようだと言っていました。私にしてみれば、今回の事件は全然不思議な事じゃありません。中国人がこのようなことをやるということは当り前のことなのです。

 交渉するにも、相手のメンタリティーを分かった上で、タフな人が求められます。ちょっと言われるだけで、弱気になり、ストレスに弱い人であってはダメなのです。でなければ、相手にしないことです。元台湾総統の李登輝氏は、よく「交渉しないのも、一種の交渉だ」と言っていました。それぐらいじゃないと、中国という巨大な覇権主義国家を相手にできません。日本も、交渉できる人をこれから養成していかなければいけないのです。私は、このことを偏見で言ってる訳でもなく、私が知っている中国の話をしています。台湾で見聞きして、私が洞察した事を話しています。今や最前線は日本なのです。日本人は覚悟が足りないのです。

 最後にとっても大事な事は、中国と、もめている国々があります。中国は、南シナ海の西沙諸島ではベトナムなどと領有権争いをし、南沙諸島では、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどと領有権争いを起こしています。これらの国は、日本がどう出るか、やきもきしながら見ていました。しかし、日本の対応は、これらの国にもの凄く失望させました。それが、今回の日本の大罪です。これは絶対言わなければいけない。強大な覇権主義国家に対して、いかに対峙するか。これらの国々が連帯して中国に立ち向かい、領土問題で覇権主義は許さない、無茶はさせないという姿勢を示し、異議を唱えなければいけません。これらの国は、今回の日本の対応をみて、一番肝心な日本が、これほど腰抜けだということでがっかりしていると思います。今回の大きな損失は、これらの国々の信用を失ったことでしょう。日本に、いざという時にはリーダーシップを発揮して、中国の覇権主義を止めてほしいと思っていたはずです。それが全部失望落胆してしまったと思います。今回の問題で、これが一番の大罪なのです。

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