江山易改、本性難移 (2002年02月25日) |
船橋洋一氏が「法治こそ中国脅威論の毒消し」と題する文章を朝日新聞に書いている2月7日付)。まず「中国には労働と土地はたんまりある。資本も頭脳も
ある。ハングリー精神はむせかえるほどある。その中で決定的に足りないのは信頼という名の社会資本」だとして、WTO加盟が法治を促進させることが望まし
く、さもなければ経済的な中国脅威論はいずれ現実のものとなるだろう、という。
これはつまり、WTOに加盟してからも従来のようにルール無視のインチキ商売を続けていたのでは世界の爪はじきになると、船橋氏は中国に対して婉曲に忠告したのだ。
かつて「中国人は信用を重んじる」「絶対に約束を守る」などの神話が日本中をまかり通っていたことを想起すると、この洞察に富んだ船橋論文には今昔の感を覚える。
中国に忠告する感興など持ち合わせてないから言うわけではないが、私はWTO加盟によってかの国が法治国に変ることなど不可能で、ルール違反の慣 行はむしろ加速されると見ている。これは中国政府の意図や政策を疑ってのことではなく、中国人の作る社会の体質が変るまいと言っているのだ。「江山易改、 本性難移」と昔から言われてきたように、中国にとってダムを掘り鉄道を通すのはむしろ易しく、人間の本性を移して「信頼という名の社会資本」を作ることの 方が遥かに難しい。昨年、中国共産党の腐敗ぶりに絶望して離党した元国家主席華国鋒氏は、「革命前と何も変ってない」と慨嘆したと伝えられるのである。
中国の社会というものは、広大な国土と厖大な人口に象徴される途方もなく大きな物体に譬えられる。この巨大物体は何千年ものあいだ長い歴史という 坂道を転がり続けてきて、想像を絶する大運動量を持つに至った。この慣性に逆らうのは難しい。孫文の辛亥革命も、蒋介石の新生活運動も、毛沢東の文化大革 命もみなこの社会の本性を移すことはできなかった。WTOならできるのだろうか?