拝啓 加藤紘一様 (2001年09月16日) |
クイズを1つ。次の言説は誰に対する誰の発言か? もしこれを、台湾海峡における北京の武力行使に反対する論調だと思った人がいたら(そう思って当然だが)、答は大外れである。正解はちょうど正反対。これは台湾人に対して北京に逆らうなと説教する加藤紘一氏の弁なのだ。 同氏は先月末台北で行われた講演において、世界平和に対する台湾海峡の重要性を説き、「台湾側に中台関係の安定を損なうような行動を自制するよう求めた」のだ(8月31日付) これに対し台湾の聴衆が反発したと伝えられているが、私もこれほど呆れた言説を近頃知らない。台湾海峡の平和ひいては世界平和が危いのはひとえに 中国が武力行使を公言しているからで、陳水扁総統が選出され、李登輝氏が治療で来日したせいではあるまい。それを日本外務省のチャイナ・スクールは、加藤 氏と同様、台湾がトラブルを作っているせいだと、論理をすり換えてきたのである。 中国が武力行使すれば米国が介入し、日本も巻き込まれるのは迷惑というのが彼らの本音だろうが、真のトラブルメーカーに対しては何も言えないくせに、弱小国と嘗めてか、その尻を台湾に持ちこもうとするのはまことに筋ちがい。まことに卑怯である。 加藤氏は自民党幹事長の要職を勤めた人物であるが、中国に対して武力行使の放棄を求めたことは一度もない。1996年、総統選挙に干渉して中国は 台湾にミサイルを発射したが、日本の橋本首相は「遺憾」の一言さえも発しなかった。昨年の沖縄サミットでも、主催国日本は台湾海峡の安全には触れなかっ た。 その何もしない日本からきた、何もしなかったことで有名な人物は、台湾人に対してだけはご立派に、「台湾も土下座外交をすべき」とお説教を垂れた。そこで台湾人は、「あんたにだけは言われたくない」と反発したのである。 |