華国鋒元主席の離党 (2001年11月25日) |
華国鋒中国共産党元主席が、9月中旬に離党届を提出し、「現在の共産党と以前の国民党の何が違うのか」などと党の腐敗に強い憤りを示したという(「朝日 新聞」11月2日付)。実は私もまったく同じ事を同じ表現で言ってきたのだが、華氏の発言なら「反中宣伝」の一言で片付けられることもあるまい。
圧政と腐敗を極めた蒋介石政府を倒して、中国共産党が政権を確立したのが1949年。あれから約半世紀、中国は強大な軍事国家になったが社会の基 本的性格は昔と変りない。一党独裁の全体主義体制。党官僚の専横と腐敗。自由と人権の抑圧。金権体質と人治主義等々、むしろ昔よりひどくなっている面もあ る。
数百万の地主が人民裁判で処刑され、土地が農民に分配されたのも束の間、すぐ人民公社に収奪される。しかしこの政策が大失敗に終った現在では、実 質的な土地の私有が復活している。市場経済原理の下で国有企業は次々と解体され、資本家が共産党に入る世の中になったのである。
生産手段の私有や市場経済なら蒋介石時代からあった。すべてが元の木阿彌ではないか。その振出しにもどるために、半世紀の歳月と何千万人もの犠牲が必要だったのか!
それにつけても、私の夫周英明の若い頃の体験が想起される。六十年代半ば、大学院生だった周は月刊「世界」の勉強会で台湾独立を論じたことがあ る。国民党による台湾の恐怖政治と植民地化、自由と人権の抑圧など、彼は痛切に語ったのであるが、その場にいた坂本義和東大教授や野村浩一立大教授によっ ていとも軽くいなされた。「それは国民党だからで、共産党だったらそんな事は有り得ない」。
イデオロギーが変れば人間も変ってくるとするこの手放しの楽観論と浅薄な人間理解に周は何とも弁駁のしようがなかったという。
政治の腐敗と官僚の専横、自由と人権意識の欠如は、中国4000年の政治文化の伝統なのだ。50年くらいでなくなるほどやわなものではない。