黙れ、無礼者! (2002年01月13日)

 

 元旦の年賀状には田中発言に触れたものが多かった。新年早々不愉快な話題だが、避けて通るわけにはいかない。

 暮れの25日の記者会見で田中外相は、「(香港の中国返還のように)台湾もそうなるとよい」と述べた。

 これに対して台湾では、政府が公的な抗議声明を出した外に、多数の民間団体による抗議活動があった。田中氏の知的水準と措辞の粗雑さは台湾でもかねてから有名になっていたせいか、抗議内容には彼女の「無知・無神経」を言う声が多くきかれた。

 しかし、これは田中氏の個人的資質の問題ではない。あのような重大な内政干渉的発言を、まるで秘書官に指輪を買いに走らせたときと同じように、単 に彼女の無作法や気まぐれに帰するのは間違いである。彼女のこの発言の背景には、1972年日本が台北から北京に馬を乗り換えて以来、親中派政客と左派言 論界が一貫して企んできた大戦略が横たわっているのである。

 彼らはこの30年間、台湾の「中国帰属」が歴史的正義であり、日本は法的にこれを承認しており、それが極東平和への道であるとする虚偽を喧伝してきた。そして当事者の台湾人の反対を、中国がミサイルをかかげて威している事実には目を閉じてきた。

 彼らの悪辣な魂胆は見え透いている。台湾を人身御供に差し出すことによって、自分たちの対中贖罪意識を満たし北京にいい顔をしようとしているだけだ。人権や平和などどうでもいいのだ。どうしても「贖罪」したいのなら身銭を切ってやったらどうか!

 今度の田中発言から1987年の土井たか子発言が連想される。同氏は「台湾統一のため日本で国民運動を起こす」と北京で約束した。彼女たちの頭の中からは「台湾人」がすっぽりぬけているのである。

 台湾でのデモの幟には「黙れ、真紀子!」というのがあったそうだ。ここは、大国に阿ね小国を侮る卑劣なやから全員を念頭に、「黙れ、無礼者!」としたほうがよかったと思う。

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