問題少年は父の貶めから (2000年07月23日)

 

 不良行為で補導された少年が、昨年は11年ぶりに100万人を突破したと、このほど警察庁が発表した。これら問題少年たちに多く見られる一つの特徴は、 家庭の中で父親の蔭が薄いことだと、以前から指摘されているが、このことに関して、私はかねてから物申したいと思っていたことがある。
 
 だいぶ前の話であるが、中井貴一扮する「善良な父親」が、休日ででもあるのか、子どもたちに構って一生懸命「家庭サービス」に努めている。そのシーンを 横目に、母親がいかにも小バカにしたような口調で「単純」とつぶやくーそんなテレビコマーシャルがくり返し放映されていた。

 考えてみると、私たちの無意識の内に、この手のCMを随分と見せられている。広告商品は何でもよい。父親に対するおちょくりをモチーフにすれば、 それでウケるのだ。かくして、父親は家事の役に立たないといって妻に責められ、流行のセンスが悪いと娘に嘲られ、パソコンができないといって息子にバカに されるだけの存在になってしまった。

 ときどき早朝のJR中央線に乗って東京駅に向うことがあるが、坐っている乗客の10人に8人は居眠りをしている。お父さんは疲れているのだ。休日 は本当は一日中寝ていたいのだ。それを無理して家庭サービスに励むお父さんに対して、「単純」としか思わない女に私は何の共感もユーモアも感じない。

 視聴率の主力は女と子どもである。CMはこうした視聴者感覚に迎合するように作られるのであろうが、安息を求めつつ家庭に戻ってくる自分の夫や父親を貶めるのが、皆さん本当にそんなに楽しいのだろうか。

 子どもに父親の悪口を言うことによって、子どもを自分の側につけ、家庭内での権威を確立しようとする愚かな母親がいる。「勉強しないとお父さんのようになるから」などと平気で言う。父親は疲れとバカバカしさとから、反論する気力もない。

 問題少年や少女はこうした家庭から出て来る。身から出た錆なのだ。

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