台湾選挙と中国の『阿Q精神』 (2001年12月17日)

 

 台湾の立法院(国会)選挙の結果は大いに意を強くするものであった。台湾の主権独立を主張する陳総統の民進党は、経済悪化の逆風をはねのけて大躍進。第 一党に踊り出た。対照的に、李登輝前総統を除名して対中傾斜へと舵を切りかえた国民党は、議席を約4割減らして大敗した。

 親中派という点で国民党と同じ穴のムジナであった親民党は、今回は台湾重視を強くアピールした作戦が効を奏して、やはり大躍進した。結党わずか3ヶ月の台湾団結連盟は、李登輝理念を体現する政党として、一気に13議席を獲得した。

 しかし、何にもまして今回の選挙を特徴づけたのは新党の壊滅である。彼らは中国の台湾統一を剥き出しに呼号する中国人の政党で、いわば北京の台湾探題のような存在である。選挙の結果、彼らが擁していた8議席は台湾島内では全滅して、金門選出の1議席を残すのみとなった。

 軒並み落選した新党議員の中には彼らの党首も含まれている。また、今春小林よしのり氏の「台湾論」を街頭で焼いてみせた秦の始皇帝のような男も、 小林氏を入国禁止処分にもっていった男も、演説中の李登輝氏に卵を投げつけた男も、そして金美齢国策顧問をクビにせよと息巻いた女などもみんな含まれてい る。

 北京の虎の威を借りて居丈高に大中華思想を強制してきた連中の全員が全員、台湾の選挙民から総スカンを喰らったというわけである。

 しかし、この選挙結果を受けて北京は何と言ったか。中国国務院台湾事務弁公室の張銘清報道局長はなんと、「台湾の民意の主流は台湾独立に反対している」と論評しているのである(朝日新聞12月6日付)。

 黒を白と強弁し、ひたすら負け惜しみと自己正当化を能事として、死んでも非を認めようとしない。この中国的性格の一つの典型を諷刺して魯迅が「阿Q正伝」を書いたのは80年前。「阿Q精神」今なお健在なり、との感を改めて強くするものである。

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