『反テロ』中国の本音 (2001年10月29日) |
本紙山本秀也北京支局長によれば、同時テロに対する中国の反応は、「本音を抑えて『反テロ』主張」だそうである(10月17日付)。この「本音」とは米国の災難を喜ぶ中国人一般の心理のことであろう。
これはもう隠しようもない本音なのだ。事件時ちょうど国務省の招待で訪米中だった中国人記者団の一行が、世界貿易センター崩壊のテレビ映像をみて拍手喝
采した事は、当時米国大手数紙に報道されたところだ。北京大学の学寮でも大歓声が上ったと、東京で中国人が発行するミニコミ紙も書いていた。
この反米感情について、中国人作家唐亜明氏が朝日新聞10月20日付に率直な解説を書いているが、台湾問題に対する「中国国民のいらだち」も原因の一つだという。
しかし、それにもかかわらず、中国政府がテロ反対と米国支援を表明したのはなぜなのか。その魂胆は見え見えである。10月11日、中国政府は新疆 ウイグル自治区のイスラム系民族の独立運動が国際テロ活動の一環だと認定した。19日にはさらに、「(独立派が)アフガニスタンの陣地で訓練を受けている 確たる証拠がある」と言明した。つまりこれは、圧政に反抗して蜂起するイスラム系民族に「ビンラディン一味」との罪名を被せ、反テロの国際的世論に便乗し てこれを撲滅せんとするための布石なのである。
中国は台湾独立運動に対しても似たような詐術を使ってきた。「台湾独立は日帝の陰謀」、「CIAの画策」などというのがそれだが、日本の左翼の中にはいまだにそんなヨタ話を信じているおめでたい人もいる。
上海のAPECに出席したブッシュ大統領は、テロ対応を国内少数民族弾圧の口実にしてはならないと述べたが、結構よく分かってるもんだ。
それにつけても、対台湾といい対イスラム・チベット・モンゴルといい、中国人における加害者意識の完全な欠如を怪しもうとせぬ日本人には、ただ呆れるばかりである。