『親日』という台湾の踏み絵 (2001年04月08日)

 

 歴史教科書問題について、ジャーナリストの蓮舫さんは「自分たちの民族の歴史が書かれていない教科書で学んでいる台湾の人々のことを思えば、今回の検定結果をみても日本は民主主義を誇るべき」と言う(4日付本紙)
 
 その通りである。台湾人は自分たちの歴史を学ぶことを許されなかったのだ。3月に台湾で起きた政治大論争は、この「歴史の隠蔽」と直接関係している。
 
 事の発端は、近現代約百年の台湾を描いた小林よしのり氏の『台湾論』が台湾で翻訳され、異常な人気を呼んだことである。旧蒋介石政権の流れを汲み、中国 の台湾併合を望む親中勢力(台湾史の教育を阻害してきた勢力でもある)はこれが面白くない。マスコミの大半を掌握している彼らは内政部に圧力をかけ、小林 氏の台湾渡航を禁止させた。3月2日のことである。
 
 翌3日、この愚挙を阻止するため台湾に飛んだ私は、親中派マスコミの凄まじい集中砲火を浴びた。執拗に行われた取材やテレビ討論などに、私は一度も忌諱 することなくすべて出席した。そして彼らが持ち出したアイデンティティーについての踏み絵を断固はねつけ、公然と宣言した。

 「私は台湾人。中国人ではない。中華民国は認めない。」
 翌日の親中派新聞は一斉に「漢奸金美齢」と書き立てたが、こちら中国人ではないのだから、漢奸呼ばわりされても痛くも痒くもない。

 帰途、一部マスコミは私を空港まで追いかけてきて、愚劣な質問を浴びせた。
 「あんた親日なんだろ?」
 まるで詰問して白状させるかのような口調だ。
 「そうですよ、大の親日家よ。で、それがどうしたの」
 「漢奸」と同様に「親日」であることは、もうそれだけで天の許さぬ罪科であるような口ぶりである。実際、日本が好きでなければ私は40何年もここにすむわけがない!
 
 狭量で独善的な中国人の人間観をいやというほど味わったが、そんな文化には決して染まりたくないものだ。

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