NHKスペシャル「無縁社会」について (2011年02月18日)

 

 2月11日夜に放送されたNHKスペシャル「無縁社会 -- 新たなつながりを求めて --」でまたもや、NHKの偏向取材が問題になっているようです。私はインターネットや携帯電話とは一切無縁の暮らしをしているので、ネット上でどんな騒ぎが起きているかは知りませんでしたが、金美齢事務所のスタッフから「これは許せない話だ。金先生はどう思いますか」と尋ねられました。話を聞くと、本当に腹立たしい思いがよみがえりました。2009年4月から6月にかけて放送されたNHKスペシャル「ジャパン・デビュー」シリーズの一回目の「アジアの"一等国"」の台湾に関する偏向報道とまったく同じ、まったく昔の過ちを反省していないのです。

 

 今回の「無縁社会」についての騒動について、スタッフの説明によりますと、インターネットの動画配信サイト『ニコニコ生放送』利用者として番組に出演した女性が、「ネット縁でつながりを持つ人」というポジティブなイメージで出演を引き受けたのに、「無縁だからネットに逃げ込んでいる」というような演出されてしまったと、抗議の声をあげているとのことです。

 彼女はオンラインゲームやブログ、距離の離れた友人同士でヤフーチャットやSkypeなどでネット上の人間関係は豊かで、ネットに"縁""つながり"を感じていることを前向きに訴えたくて、取材を受けたそうです。彼女自身は現実世界に家族も友達もおり、お店で接客業もしており、けっしてネットに逃げ込んでいるようなタイプの人ではないそうです。しかし、放送された番組をみると、「父の看護で疲れ、友人もおらず、現実逃避のためネット放送を利用し、ネットの先の見知らぬ人に対して居酒屋や公園で独りぼっちで話しかける...」そういうネガティブな"無縁"の人のイメージで編集されたそうです。しかも公表しないと約束していた年齢を公表されたそうです。

 2月10日のNHKニュースウォッチ9の中でも、無縁社会をテーマに取材された「ゴマ」さんが、「インタビューだけでも2時間近く行われ、同じような質問を違うアプローチで何度もされました。 極力理解しやすいように例を交えてお答えしましたが、使われたのは非常に内向的なイメージの文言のみでした」(twitter:#nhk_muen  10:14 AM Feb 11th webから  @katogoma 「ゴマ」さん)と述べています。

 

 2009年4月に放送されたNHKスペシャル「アジアの"一等国"」では「台湾人は漢族」「人間動物園」「日台戦争」といった、普通は使わない造語を使いあたかも台湾人が反日であるかのような印象操作をしたことが問題になりました。台湾人の柯徳三さん(台湾の親日団体「友愛会」元運営委員)のインタビューが番組中に使われましたが、柯さんは台湾人の日本に対する思いを良い部分も悪い部分も語ったのに、悪い部分だけ恣意的に編集された、「NHKに利用された」と訴えていました。

 このような偏向報道は、必要のない日本の反台湾感情をあおり、日台関係を傷つけることになりました。当時、台湾人を含む1万人以上の原告団が「NHKの報道に事実と異なる偏向、やらせや事実の歪曲・捏造があり、放送法の定める公平な報道に違反し、精神的損害を受けた」として、NHKに対し原告一人あたり1万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。これは日本史上最大の集団訴訟として新聞などでも報道されました。

 しかし、NHKは公式に謝罪も訂正もせず、開き直っています。原告の一人の柯さんは、高齢のため2010年2月2日にお亡くなりになりました。

 

 NHKは市民から受信料を徴収して運営されている公共放送です。民放以上に公平、客観性のある放送が期待されるのは当然です。しかし、またもや、今回の「無縁社会」の偏向報道のような事件が起きたわけです。それは「アジアの"一等国"」で1万人の市民に抗議されたことに対してNHKが何の反省も検証もせず、市民から批判されても痛痒を感じないことの表れだと思います。今回もNHKは開き直って、反省も検証もしないのでしょうか。なら、今後、また必ず偏向報道を行って誰かを傷つけるのではないかと懸念します。

 NHKスペシャルには非常に優れた番組もあります。番組にプロデューサーやディレクター、スタッフら作り手の思いや価値観が込められることもあるでしょう。このような編集という言葉では許されないレベルの印象操作をやってしまうことで、これまで築いてきた高い評価や番組スタッフの情熱にも傷がついてしまうのは本当に残念です。ぜひこの機会に、もう一度、反省すべき点は反省し謝罪すべき点は謝罪してほしいと思います。

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