よくぞここまで、新型ウイルスの水際作戦 (2009年05月08日)

 

 新型インフルエンザ関連が報道をにぎわしていますが、体験者として言わせていただきます。新型インフルエンザ発生にニューヨークで遭遇し、日本の水際防衛活動を成田で体験、追跡調査電話を自宅で受けましたが、連休を返上しての熱心で丁寧な日本での対応に感心しています。

 ニューヨークでは、クインズ地区の高校生に感染者がでたという報道があるにもかかわらず、マスクをする人などほとんど見かけることなく、市民の緊張感は一切感じられません。ですから私も気楽なもので、雑踏の中、人が密集するオペラハウスに毎晩通ったりしていました。日本の空港での水際作戦の大変さを帰国間際に日本の新聞で知り、いったいどうなるのかと急に心配になりました。

 ニューヨークを発つとき、日本航空のラウンジで赤ちゃんを抱っこした若いお母さんに会いました。なんと生後2カ月だそうです。駐在員であるご主人とニューヨークに住み、ニューヨークでお産したのですが、家族は帰ったほうがよいという会社の意向をうけて帰国することにしたとのこと、赤ちゃんを連れての長時間飛行、それに着陸してからの検疫もそうスムースには進まないだろうと想像するととても不安な気持ちになりました。

 想像通り、成田での機内検疫は大変でした。5月1日の午後4時過ぎに着陸したのですが、当時はまだ検疫官の人数も多くなく、順番があり、検疫官はすぐには現れません。30分ぐらいしてから検疫が始まり、発熱者はいなかったものの、鼻水やくしゃみがでるという申告者が50番席あたりに一人いて、その方の検査が実施されました。幸い陰性だったのですが、これがもし陽性で、機内の200人以上が、あの赤ちゃんも含めて一時期隔離、となったら大変なことになるところでした。ひやひやものです。でも日本人は正直ですね、あらためて思いました。着陸から2時間後ぐらいに機内からの無事解放となりました。

 一昨日あたりのニュースでは、検疫もだいぶ慣れてきて、人数も増え、それこそ20分から30分で終わり、思ったよりも早く機外に出られた、との帰国者の映像がながれていました。だいぶスムースにいくようになって本当に良かったと思います。

 この水際作戦、これだけの大仕事で大変は大変ですが、国内で広がったらもっと大変なことになるわけで、当然評価されるべきでしょう。機内からなかなか出られない、といった苦痛はあるかもしれませんが、これだけきめ細かい対応は評価すべきです。それに、機内での質問票がリストになって各地域に回り、6日、連休中にもかかわらず区の保健所から電話がありました。

 「状況はいかがですか?」と訊かれ、「幸いいまのところ何もありません」と答えましたが、潜伏期間は最長10日だそうです。「何かありましたらお電話をお願いいたします」と、平日であれば区の担当へ、土日は都の担当へ、とのことでした。それぞれの電話番号をメモして、「いろいろご苦労様です」とねぎらいの言葉で電話を切りました。リストが回ってこない、といった発言をTVで観ますが、これだけの大仕事です、そのおかげで事前にいろいろなことを防いでいるわけで、たずさわっておられる方々は本当にご苦労様ですし、よくぞこれだけきめ細かくやっていただいている、ととても感心しています。

 でも、ウイルスに対しては強い関心をもって、こんなに仕事をきっちりと丁寧にやるのに、国の安全保障となると、無関心だったり、熱心にやろうとすると足を引っ張る人がたくさんでたりする、これが不思議というか、アンバランスというか、改めて考えてしまいます。安全保障の方がずっと大切なことだと思うのですが。

 ところで、この新型インフルエンザ、どうやら60歳以上にはかかりにくいとのこと、SARS(重症急性呼吸器症候群)のときは年寄りがかかったら7割は死亡する、などといわれ年寄りを怖がらせましたが、今回は年寄りでよかった、ということになるのでしょうか。歳をとるということは悪いことばかりじゃありません。

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