太陽花學運(ひまわり学生運動) (2014年04月11日) |
台湾の学生運動について、今月発売の月刊WiLLにわたくしなりの観察、分析を寄稿しています。ぜひお読みください。本日届いた「台湾通信」、台湾在住の友人(日本人)が不定期に発行している個人レポートですが、今回のタイトルは「太陽花學運(ひまわり学生運動)」、ご本人が現場を歩き見てきた状況です。
読んでいて涙が出ました、とても嬉しくて。これこそ民主主義、このような学生たちのビヘイビアが嬉しい。ここに全文を掲載しますので、日本の若者にもぜひ読んでいただき、自分たちがやるべきことをしっかり認識して欲しいと思います。わたくしに言わせると、日本の学生運動は「ごっこ」です。でも台湾は違います。台湾社会のターニングポイントを間違いなく作ってきているのです。その差は何なのかということを日本の若者たちに真剣に、しっかり考えてほしい。ぜひぜひお読みください。読んだ後、わたくしは涙しました。
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臺灣通信(第八十三回)「太陽花學運(ひまわり学生運動)」 2014年4月8日 傳田 晴久
1. はじめに
今、台湾では「ひまわり學運」と呼ばれる事件でもちきりである。日本でも色々報道されており、既にご存知の方も多いと思います。台南に住む私としても、何かお伝えしたいと思いましたが、すでに多くのレポートがあると思われるので、少し違った視点からの報告を試みます。
日経ビジネス(2014.4.23)に福島香織さんが、「続『台湾ひまわり学運』のゆくえ―カリスマ学生リーダーの登場はアジアを変えるか」という記事を書かれ、その中でひまわり學運の「命令系統とロジスティクス管理のものすごさ」と書かれていることを知りました。永年ロジスティクスを研究してきた一人として、この「ひまわり學運」のロジスティクスについて報告したい。
2. 簡単に経緯を
昨年(2013年)6月中台間で調印した「海峡両岸サービス貿易協定」の批准をめぐって、今年(2014年)3月17日立法院で審議が行われていたが、与党側が一方的に審議を打ち切った。翌日夕方、サービス貿易協定に反対するデモが行われ、夜9時頃デモの学生約300名が立法院議場内に進入した。
3月23日には強硬派学生の一部が行政院に突入し、排除する警官隊と流血事件を引き起こした。3月25日、馬英九総統が学生との対話を提案し、一時学生側も同意したが、具体的対話方法(学生は公開討論を要求)について折り合わず、学生側は立法院を無期限占拠すると宣言。
そして3月30日(日)、学生による呼びかけに応じた抗議集会が開かれ、主催者側発表50万人(警察発表11万6000人)という大規模な集会が開催された。
4月1日には中台統一を主張する団体の約1500人が立法院前でサービス貿易協定賛成を訴え、立法院侵入を企てたが、警察に阻止された。
今回の学生による立法院議場占拠事件は「太陽花學運」(ひまわり学運)と呼ばれている。
3. 現場訪問
先週の金曜日(4月4日)、台北に行く機会があり、交流協会台北事務所から「抗議活動に係わる注意喚起」(4月2日付け)が出されていたが、ここは自己責任に於いて様子を見てきた。
中山北路を南に進むとまず行政院の建物があり、その入り口にはものすごいバリケードが築かれており、周辺には警備の警察官が沢山おり、ちょっと緊張が走る。ここは3月23日(日)夜、一部学生が敷地内に入り、警察による強制排除があり、多数の負傷者が出た所である。
行政院を過ぎ、忠孝東路を過ぎるとここからは道路の名称が変わり、中山南路になる。角には日本統治時代の美しい建物、監察院があるが、警備は全くされていない。その先に立法院があり、幟や旗が沢山見えてきた。監察院と立法院の間の道路が青島東路といい、学生によって占拠されている。立法院の建物を左に見ながら中山南路をそのまま進むと、済南路に出るが、ここも多くの学生が占拠している。さらに進むと教育部の建物があるが、ここは無防備である。
教育部の先の徐州路の角に中華工芸館があり、懐かしい建物なので、ちょっと覗いてみたが、立法院の騒ぎとは全く無関係の静けさであった。しかしその隣の建物は厳重に警備されていた。徐州路を更に左に曲がると林森南路であり、立法院の方に戻る道である。そして済南路と青島東路に戻り、いよいよ学生が占拠している道路、立法院の敷地内に入ることにした。
4. 「ひまわり學運」のロジスティクス
ロジスティクスの定義はいろいろあるが、佐々淳行氏がよく言う「食う寝るところに住むところ」は、この「ひまわり學運」のロジスティクスを的確に表現している。
青島東路を曲がってまず最初に目に入ったのは移動トイレである。警備する側が学生のために用意するとは思われないので、学生側が用意したのであろう。こんなデカいものを、しかも沢山用意するとは、「ひまわり學運」のロジスティクス担当はなかなかやるなぁと思った。次に目に入ってきたのは、たくさんのテントとその下におかれている物資と表札である。テントには「飲料站」、「物資站」、「分別站」などと書いた張り紙があり、その下に段ボールに入ったペットボトル、食料品(乾物)などが所狭しと置いてある。「站」は駅の事、即ち基地である。
台車に段ボールの箱を乗せて押している学生が2人いた。箱の中を覗くと粽がたくさん入って居り、座り込んでいる学生に呼びかけている。学生が手を挙げると、粽を1個、2個と手渡していく。食料供給担当である。どう見ても学生とは思えない風体の男が手を差し出すと、ためらうことなくその男にも粽を渡していた。
側の地面にペットボトルと水が入ったコップが無造作に置いてあり、張り紙がしてある。どうぞご自分で自由にお持ちくださいとある。これは「飲料站」の学生が置いたものか、外部の市民の差し入れたものが分からない。
学生が10数人車座になって討論している。隣で、学生が資料を配布している。見せてもらうと、それには「サービス貿易協定条項」と書いてある。自分が60年安保闘争の時デモに参加したことがあるが、駆り出されただけで、安保条約の条文など一つも読んでなかったことを思い出す。「ひまわり學運」の学生さん達はサービス貿易協定の条文を学習しているのだ。
青島東路に面した立法院の敷地内に足を踏み込もうとすると、右側に入口、左側に出口の表示がある。敷地の中にはかなりの人が入って居り、その先に立法院の入り口がある。武装した警官が数人、楯を前に置いて警備している。武装警官の3、4m先に女学生が10数人座り込んでいる。その間に屈強な男子学生が2、3人立ちはだかっている。立法院の議場に立ち入る者を学生が自主的に警備しているようだ。「ひまわり學運」には警備担当もいるのだ。
敷地の出口の横に「医療班」の張り紙があり、ここは撮影禁止になっていた。ボランティアの医師が詰めているようだ。出口を出ると、横に狭い通路があり、縄で仕切っている。学生が立って整理している。縄には紙切れがぶら下がっており、医療班のための緊急用の通路につき、立ち入らないでくださいと書いてある。
5. 撤収宣言
そして今日(4月7日月曜日)20:00、学生たちは記者会見を開き、4月10日(木)18:00に立法院を明け渡すと宣言した。
前日午前11:00頃、立法院長王金平氏は立法院に立てこもる「ひまわり學運」を訪ね、学生たちと握手を交わした。院内に入る直前、数十人の与野党の立法委員を引き連れた王金平院長は声明を発表した。曰く:「両岸協議監督条例草案の立法以前に、両岸服貿協議に関連する党団協商会議を招集しない。」これは学生が求めていた「先立法、再審査」(まず法律を定め、しかる後に審査を進める)を支持したものとみなされる。
学生たちは王金平立法院長の声明から「善意」を感じ取ったようである。
見事である。しかし、今後、何が起こるか分からない。何せ相手が相手である。どんな「奥歩」(汚い手)を繰り出してこないとも限らない。228事件の時、陳儀は市民に歩み寄る姿勢を示して時間稼ぎをし、その後に大虐殺をしたのだから。国民党の立法委員の中には、王金平立法院長の声明も、「ひまわり學運」の学生を「見舞」ったことに対しても強烈な反対をしている者がいる。結果を見るまでは全く予断を許さない。
6. おわりに
「ひまわり學運」のロジスティクスを、好奇心から、(失礼ながら)やや冷やかし気味に見に行ったが、医療班のための通路を準備し、人を配して確保しているのを見て、これは本物だと思った。テントを並べ、物資を積み上げ、その背後にセブンイレブンがあったが、整斉と営業している。デモや抗議活動が行われている周辺は、本来乱雑で、秩序が取れていないのがふつうであるのに、国によっては略奪、放火もあるというのに、なんと整然とした抗議活動だろうか。「50万人デモ」の終了も見事で、解散時、ごみひとつ落ちていなかったと報じられている。
あと少しで、10日(木)の18:00が来る。どうか何事もなく、無事立法院を明け渡してほしい。そして、「史上最棒學運」(史上最高の学生運動)を成功させてほしい。
このたび台湾の学生運動について、先回も少々述べましたけども、私自身は今月発売の月刊ウイルで私なりの観察なり分析をしておりますけども、台湾在住の伝田さん、いつも台湾通信を送ってくれる方ですけども、今回が83回ということで、台湾のひまわり学生運動っていうタイトルで、ご本人が見て歩いた状況を送ってくれましたんでぜひ皆さんにも読んでほしいと思います。
私自身はこの通信を読んで涙が出るほど嬉しかった。学生たちが本当に、これこそ民主主義、というようなビヘイビアをしてるんだっていうのがとても嬉しかった。日本の若者にもぜひこれを読んで、そして自分たちやるべきことを認識してほしい。私いつも言うように台湾と日本の学生運動の違いはなにかというと、日本はあくまでもごっこ、台湾は違う、間違いなく台湾の社会のターニングポイントを作るんですね。その差はなんなのかというとを、やっぱし日本の若者たちに、しっかり真剣に考えてほしいと思います。ぜひぜひこれを読んでください。私は本当に読んだ後、涙が出ました。